『言霊はこうして実現する』伯家神道の秘儀継承者・七沢賢治が明かす神話と最先端科学の世界

五階層を拡張した九階層もまた、伯家神道の行法の体系とかなりの部分で符合するようだ。たとえば、伯家神道で重視される一二三祓(ひふみのはらい)では、「ひ（一）ふ（二）み（三）よ（四）い（五）む（六）な（七）や（八）こ（九）と（十）……」と数を数えていくことがそのまま祓いとなっている。十から先は一桁上がるため、これは一から九までの九階層を示していることが理解できるだろう。
また、七沢氏の提唱する九階層「天・空・風・木・水・土・金・火・地」は、そのまま伯家神道の修法神(しゅうほうしん)にも対応するという。
「伯家神道は儀礼や神話を精密に把握して実習していたので、この九要素の階層について体感的・実感的に理解しています。そして、その理解が歴史上のある段階では王権の原理に応用されました。つまり、天地九界に呼応貫徹してこそ、真の王であると考えられていたのです」
その九階層理論に基づいて考案されたのが、「方位相階層(ほういそうかいそう)結界(けっかい)」だ。ある種のマンダラのようにも見えるこの図には古来より伝わる十種神宝(とくさのかんだから)を表す記号がバランスよく配置され、内部の四角形が五階層と四階層の計九階層となっている。
この図は九階層の説明であると同時に、これ自体がある種の力を持っており、たとえば金縛りに悩まされていた人の部屋にこれを貼っておくと、ぴたりと金縛りが起きなくなったというような例もある。前章で触れた、階層を分けて整理することはそれだけで祓いとなる―という考え方でいけば、これは当然のことであろう。
「今、大から小まで主体が自在に移りながら、それを自覚できるシステムが人類において形成されてきています。つまり、階層を行き来できるようになってきた。それが新しい時代のパラダイムなのです。これは別に新しい思想ではなく、もともと伯家神道にあった考え方を現代に合わせたものです」
七沢氏の語る未来的なパラダイムは決してそう先のことではないようだ。