出版社:文芸社 著者:大野靖志 定価:1,680円
●プロローグ― 言霊によって現実を変える具体的な方法を初公開 ― どうして日本語は美しいのか? ― 言霊(ことだま)は「単なる迷信」ではない ― 西洋的価値観は私たちを幸せにしたか ― 日本― 新しい文明のパラダイムを提示しうる国 ― いにしえの叡智を今に伝える言霊学と伯家神道 ― 階層性と統合性によって知識を整理する ― 本書の使命とその方法論
伯家神道の秘儀継承者・七沢賢治が明かす神話と最先端科学の世界
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日本語が形成する日本人特有の感性
日本語は言語の形態論上の分類において「膠着(こうちゃく)語」のカテゴリーに入る。これは、単語に接頭辞や接尾辞などを膠着(にかわではりつけたように)させて意味を生み出す形態の言語であり、その構造は日本語の成立過程に深くかかわっている。
上代語における最短の単語は一音であり、その一音一音の組み合わせから日本語は生まれてきた。
「そのように一音で意味を成す言葉を『一音語』、その意味を『一音義』といいます。一音語の代表は体の各部を表す単語であり、マ(目)、タ(手)、ハ(歯)などがあります。これが二音になると、ミミ(耳)、イキ(息)、アク(足)などとなります。つまり、日本語では一音にも意味があり、それが二音、三音となり、組み合わされて、次第に言葉が形成されていったのです」
七沢氏によると、上代語は一音語に始まり、二音、三音となり、その三音の組み合わせだけで2500以上の単語が形成されていたという。2500語といえば、人と人との意思疎通において必要十分な単語数であり、複雑な心情を表すこともできたはずだ。
一例として「憧(あこが)れる」という言葉を考えてみよう。
これは古代においては「アクガル」であり、身体語である「アク(足)」と動作語の「カル(駈る)」を膠着させて生まれた単語であった。つまり、足が地から離れて中空を漂っているような精神状態のことを古代の人々は「アクガル」と呼んだのだ。そのように、一音語、あるいは二音語、三音語が結びついていき、数多くの語彙(ごい)が生み出された。
「一音語にも多義があり、一音多義と呼ばれます。そして、その一音語が組み合わさってさまざまな言葉になっているのが、あらゆる現象を語彙にした日本語の特長です」
そのように森羅万象(しんらばんしょう)を語彙にするプロセスにおいて、日本語には擬音語(ぎおんご)や擬態語(ぎたいご)が他の言語と比べて数多く含まれることになった。いわゆる言語学の世界では、そのような擬音語・擬態語は幼稚なものとされるようだが、見方を変えれば、これは天地自然に感応(かんのう)しやすい日本人特有の感性を示すものといえよう。
このことは、元・東京医科歯科大学教授の角田(つのだ)忠信氏による、日本人の脳についての研究にも述べられている。
人が話すときには言語脳とされる左脳でその音を聞き、楽器の音などは音楽脳と呼ばれる右脳で聞いている―と一般にはいわれているが、角田氏によると、虫の声のような自然界の音の場合では、西洋人などが右脳においてノイズ的な「音」として聞く一方で、日本人は左脳で会話のような「声」として聞いているという。
そういわれると心当たりのある人もいるだろう。
鳥のさえずりや動物の鳴き声、風が木の枝を揺らす音や雨音など日常に溢れる自然音をわれわれはある種の「声」として捉え、その自然界からの語りかけに趣きを感じてきた。
ここここと雌鳥(めんどり)呼ぶや下すずみ
鶏(にわとり)の鳴き声をそのまま「ここだここだ」と呼びかける声とみなした、この小林一茶(いっさ)の句は、まさにそのような日本人の天地自然への感応性が最大限に生きたものとなっている。
角田氏によると、自然音を左脳で「声」として聞く日本人の特性は人種的なものではなく、あくまで日本語に由来するという。つまり、外国人であったとしても、日本語で育てられると「自然の声」を聞くことができるのだ。