
出版社:文芸社 著者:大野靖志 定価:1,680円

●プロローグ― 言霊によって現実を変える具体的な方法を初公開 ― どうして日本語は美しいのか? ― 言霊(ことだま)は「単なる迷信」ではない ― 西洋的価値観は私たちを幸せにしたか ― 日本― 新しい文明のパラダイムを提示しうる国 ― いにしえの叡智を今に伝える言霊学と伯家神道 ― 階層性と統合性によって知識を整理する ― 本書の使命とその方法論
伯家神道の秘儀継承者・七沢賢治が明かす神話と最先端科学の世界
当サイトでは、出版社の文芸社様にご協力頂き、『言霊はこうして実現する』を全文掲載しております。
言霊について深く理解するために、是非お役立て下さい。
※無断使用・転載は著作権により禁止されています。
当サイトの内容はその作成者に著作権があり、それらを作成者に無断で使用したり転載はできません。
七沢賢治が継承する伯家神道の教えを学びたい方は、【一般社団法人白川学館】の講座案内をご覧ください。
最新の研究成果は【株式会社七沢研究所】をご覧ください。
宇宙は「無」から生まれた
まずは、「対称性の自発的破れと言霊」について、その前提となる真空の性質に関する説明から始める。
「真空」とはどんなものなのか。どうやら、私たちが普段イメージする「真空」と、量子論で明らかにされた「真空」とはイメージが異なるようだ。
私たちは、真空は「何もない空間」とイメージしがちであり、「何もない」とはたとえば、エネルギーもゼロであるはずだと確定することを意味する。しかし、これはすべての状態を不確定だと考える量子論に反している。
そもそも量子論では「何もない」という状態を認めていない。哲学的な意味での「無」や「ゼロ」は物理的にはありえないというのだ。あるいは「無は無ではない」ことも量子論が明らかにした真理の一つである。
そこで量子論では、真空は何もない空間ではなく、いたるところで粒子と反粒子が対生成(ついせいせい)すると考えた。しかし、対生成した粒子と反粒子はすぐに結合して消えてしまう。これが対(つい)消滅である。
このように、真空の中で無数の粒子と反粒子が絶えず対生成・対消滅を繰り返している状態を「真空の揺らぎ」と呼ぶ。真空は完全な「無」ではなく、粒子や反粒子が存在する「有」との間を揺らいでいるのである。なお、『フィールド響き合う生命・意識・宇宙』(リン・マクタガート著、野中浩一訳、河出書房新社)では、この真空のことを「ゼロ・ポイント・フィールド」と記述している。
さらに量子論における「無」の概念―真空の揺らぎと同じように無と有との間を揺らいでいる状態―に基づいて、「宇宙は無から生まれた」というアイディアを述べたのが、ウクライナの物理学者ビレンケンである。
宇宙が無から生まれるとは何とも奇妙に思えるが、もし宇宙が「何か(有)」から生まれたとすれば、「では、宇宙を生んだその『何か』は何から生まれたのか」という疑問が生じることになり、無限に問いが続いてしまう。そこでビレンケンは、「宇宙は何もないところ(無)から生まれた」と考えることで問題を回避した。
一方、量子論に示される世界像と『古事記』の世界像との類似性に注目すると、創世神話の部分で、天之(あめの)御中主神(みなかぬしのかみ)から高御産巣日神(たかみむすびのかみ)と神産巣日神(かみむすびのかみ)が生じたとする記述が大変興味深い。
七沢氏に言霊学を教えた小笠原孝次氏は、混沌とした宇宙に生まれた意識を天之(あめの)御中主神(みなかぬしのかみ)「ウ」、宇宙を照らす意識の光を高御産巣日神(たかみむすびのかみ)「ア」、その光によって照らされた客体としての宇宙を神産巣日神(かみむすびのかみ)「ワ」としてそれぞれ定義づけたという。これを、イコールではなく類比(アナロジー)として考えれば、この対生成の関係をそのまま、同じく対生成された粒子と反粒子の関係に置き換えてみることができそうだ。