
出版社:文芸社 著者:大野靖志 定価:1,680円

●プロローグ― 言霊によって現実を変える具体的な方法を初公開 ― どうして日本語は美しいのか? ― 言霊(ことだま)は「単なる迷信」ではない ― 西洋的価値観は私たちを幸せにしたか ― 日本― 新しい文明のパラダイムを提示しうる国 ― いにしえの叡智を今に伝える言霊学と伯家神道 ― 階層性と統合性によって知識を整理する ― 本書の使命とその方法論
伯家神道の秘儀継承者・七沢賢治が明かす神話と最先端科学の世界
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パラレルワールドと量子コンピュータ
前出のコペンハーゲン解釈では、観測される電子の位置について「それぞれの場所にいる状態が重なっている」と解釈していた。次ページの上図で示すように、「A点にいる状態」「B点にいる状態」「D点にいる状態」などが一つの電子の中で重なっており、どこか一ヶ所だけにいるとはいえないという考え方である。
これに対して多世界解釈では、観測する前の電子はどこか一ヶ所だけにいると考える。だがその代わりに、私たちの知らないうちに世界が複数に枝分かれしていると考えるのだ。すなわち、「電子がA点にいる世界」「電子がB点にいる世界」「電子がD点にいる世界」というように、複数の世界に分岐するということである。そして、それらの世界は重なって同時並行的に存在していると考える。
その場合、私たち観測者自身も、それぞれの世界に枝分かれして存在していることになる。だが、枝分かれしたそれぞれの観測者は、自分がどの世界に来ているのかは、電子を観測するまで断定できない。実際に電子を観測して初めて「私は『電子がA点にいる世界』にいるんだ」などと分かるのだ。ただし、事前にそれを確率的に予測することは可能である。
この多世界解釈は、アメリカ・プリンストン大学の大学院生であったエベレットが1957年に著した「パラレルワールド論」が原点になっている。日本語では「並行宇宙論」と訳されているが、ワールドが宇宙となっているのは、エベレットの論文が宇宙の成り立ちを考えたものだったからだ。
エベレットは量子論が自然界の基本原則であるならば、その原理はミクロの世界だけではなく、マクロの世界全体にも、ひいては宇宙そのものにも適用されるだろうと考えた。
宇宙はその誕生以来、量子論に基づいて可能性の数だけ(コペンハーゲン解釈でいう「重ね合わせ」の状態だけ)いくつにも枝分かれしてきて、その一つが現在私たちのいる宇宙だとエベレットは考えた。そして、私たちの知らないところに、別の宇宙がいくつも存在し、そこには「もう一人の私たち」が暮らしているというのである。
さて、量子論の実用面における最先端の話題の一つに、量子の特異な振る舞いを応用した超高性能の量子コンピュータを作ろうという夢のような計画が現在進行中である。それが実現したなら、パラレルワールドが実在する証拠となるだろう。
現在のコンピュータは、あらゆる情報を二進数の数字に置き換えて演算処理を行っている。二進数は「0」と「1」の二つで表される数字である。「0」か「1」かという情報処理の単位をビットと呼ぶ。
これに対して量子コンピュータでは、情報処理の単位に「0と1の重ね合わせの状態」を利用しようとしており、これは量子ビット(キュービット)と呼ばれている。
理論的には、10個の量子ビットがあれば、二の10乗=1024通りの演算を一度に行うことができることになり、量子ビットの数が増えるほど演算能力が向上するため、これを利用すれば、一度に大量の情報を処理して高速演算を実行できるのである。
この量子コンピュータの概念を考えたイギリスの物理学者ドイチェは、「量子コンピュータが並列演算を行えるのは、同時並行的に存在する複数の世界で演算が実施されるからだ。つまり量子コンピュータが完成すれば、それは多世界解釈の正しさの証明になる」と述べている。
しかしながら、量子コンピュータの実現に至るには、デコヒーレンスの問題(量子ビットでの計算中に外部から光子(こうし)や電子が進入すると「観測した」のと同じになり、重ね合わせの状態が解消されてしまう問題)や量子ビットの集積化の問題、量子コンピュータ用の計算アルゴリズムの開発など、多くの難問をクリアしていかなければならない。
量子論に示される世界像と伯家神道の世界像との類似性に注目すると、量子コンピュータとは、私たちの住むこの宇宙に並行して存在するパラレルワールド(並行世界)の量子によって記憶・計算を行うものであることを意味しており、幽の幽、あるいは天津神の世界にアクセスするコンピュータと考えることができそうだ。