![言霊はこうして実現する 言霊はこうして実現する](img/cmn/header_book.jpg)
出版社:文芸社 著者:大野靖志 定価:1,680円
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●プロローグ― 言霊によって現実を変える具体的な方法を初公開 ― どうして日本語は美しいのか? ― 言霊(ことだま)は「単なる迷信」ではない ― 西洋的価値観は私たちを幸せにしたか ― 日本― 新しい文明のパラダイムを提示しうる国 ― いにしえの叡智を今に伝える言霊学と伯家神道 ― 階層性と統合性によって知識を整理する ― 本書の使命とその方法論
伯家神道の秘儀継承者・七沢賢治が明かす神話と最先端科学の世界
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対称性の自発的な破れと言霊
ところがここで、そのように真空から生じた素粒子が対消滅によってすぐに消えてしまうのでは、物質の創造が起こらないのではないか、という当然の疑問が生じる。
この宇宙が誕生したときにも同じようなプロセスが働いていたと考えられるが、そのような対生成と対消滅を繰り返すばかりでは、とうてい現在のような宇宙の姿にはなりえないのである。
だが、2008年にノーベル物理学賞を受賞したシカゴ大学名誉教授・南部(なんぶ)陽一郎氏の「対称性の自発的な破れ」の理論によって、真空の対称性の自発的な破れが、物質と宇宙の生成に重要な役割を果たしていることが明らかにされた。
ここで、量子論に示される世界像と『古事記』の世界像との類似性に注目してみよう。
『古事記』の世界像では、伊邪那岐神(いざなぎのかみ)「イ」と伊邪那美神(いざなみのかみ)「ヰ」の関係に見られるように、兄神と妹神が対称性を持ちながら生じていく。しかし、その対称性はやがて階層的に破れていく構成となっており、その点が「対称性の自発的な破れ」理論とイメージ的に重なる。
「イ」と「ヰ」をつなぐのは「イの道」すなわち生命(いのち)である。しかし、その生命力は、真空において対生成と対消滅を繰り返す素粒子のように、いまだ物質(現象)として顕現せざるエネルギーの揺らぎでしかない。つまり兄神と妹神が対称性を保っているために物質として顕現できないのである。
一方、伊邪那岐神(いざなぎのかみ)、伊邪那美神(いざなみのかみ)より後に生まれた神々に関しては、兄神・妹神という構成になっておらず、対称性が破れており、目に見える現象世界の創造が起こりうるのである。
『古事記』には真空が対称性を持つこととあわせて、創造にはその対称性が破れることも必要であると示されている。このことをどう捉えたらよいのか。七沢氏はこう言う。
「神道では、創造・維持・帰趨(きすう)が中今(なかいま)で―つまり瞬間瞬間に―起きているという考え方をします。それを体感するのが言霊の世界であり、言霊学としてある種の哲学となっています。そしてそれは、現在の量子論にとても近い考え方なのです。言霊学の理解と実践、伯家神道のご修行では、それを体感的に実感するということをします」
量子論に示される世界像と言霊学の世界像との類似性に注目すると、神世七代(かみよななよ)までの神々は皆、母音・半母音に対応している。母音は生命力そのものを表すが形を持たないため、物質的な顕現(けんげん)を見ることができない。しかし、そこに父韻(ふいん)が関与すると子音が生まれ、物質宇宙の創造を見ることになる。
すなわち、天之(あめの)御中主神(みなかぬしのかみ)「ウ」を中心に対称性の保たれた母音・半母音の世界に父韻が破れを生じさせることで、世界は生まれたのである。
そのような「対称性の自発的な破れ」による創造原理を体系化したものが、『古事記』であり、五十音であると思われる。