
出版社:文芸社 著者:大野靖志 定価:1,680円

●プロローグ― 言霊によって現実を変える具体的な方法を初公開 ― どうして日本語は美しいのか? ― 言霊(ことだま)は「単なる迷信」ではない ― 西洋的価値観は私たちを幸せにしたか ― 日本― 新しい文明のパラダイムを提示しうる国 ― いにしえの叡智を今に伝える言霊学と伯家神道 ― 階層性と統合性によって知識を整理する ― 本書の使命とその方法論
伯家神道の秘儀継承者・七沢賢治が明かす神話と最先端科学の世界
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量子場脳理論と言霊
量子場脳理論とは脳と心に関する最先端の科学理論であり、治部眞理(じぶまり)氏、保江(やすえ)邦夫氏によるその学説は、1978〜79年に書かれた、スチュアート氏、高橋康(やすし)氏、梅沢博臣(ひろおみ)氏の論文に起源を持つ。
「こころ」とは何か―梅沢氏と高橋氏が最初に着目したのは、人間の脳の記憶機構だった。つまり、私たちの「こころ」=意識を育む記憶を、自然現象を理解する上で最も基本的な物理理論である「場の量子論」における秩序形成過程として捉える理論を提唱したのである。これが現在、「量子場脳理論(Quantum Brain Dynamics)」あるいは「量子脳理論(Quantum Brain Theory)」という名前で呼ばれている理論の原型となった。
現在の医学や生物学では、ニューロンと呼ばれる神経細胞がたくさん集まって複雑な神経回路を作っているものが脳と呼ばれている組織であり、記憶や意識といった脳の高次の機能は、ニューロンの神経回路の中を行き交う電気的な信号や化学的な信号によって生み出されていると考えられている。このような考え方は20世紀の初めに成立した、古いものである。
だが、梅沢・高橋両氏は、ニューロンの神経回路の作用は本質的なものではなく、記憶や意識など脳の高度な機能の本質は、むしろ量子の世界にあると考えた。
すなわち、脳においては、ミクロのスケールの量子論的物理系と、ニューロンの神経回路が基礎をおくマクロのスケールの古典的物理系が有機的に結びついた物理系の存在が想定されるということだ。
その場合、彼らの量子場脳理論では、脳の中に量子場がいくつか存在しなければならない。二人はそれをコーティコン場とスチュアートン場であると考えた。さらに、コーティコン場の波動を場の量子論の枠組の中で捉えたものがコーティコン場の量子=コーティコンであり、スチュアートン場の波動がスチュアートン場の量子=スチュアートンとされた。
ただし、その理論が提唱された当時の脳科学においては、このような量子や量子場が脳の中にあることなど誰も想像だにしなかったので、梅沢・高橋両氏は当初、これを仮説として提唱したのである。
では、より具体的に見たとき、量子場脳理論の基本仮説はどのようなものになるのか。
第一に、脳の機能的な構成要素は細胞膜で閉じられたニューロンと呼ばれる神経細胞だけの物理的な体系ではないと考える。つまり、量子場脳理論における脳の構成要素のイメージとしては、脳の基本単位としてよく知られたニューロンではなく、量子場が細胞の内外に広がったものだと考えるわけだ。
第二に、このように細胞の内外に広がった量子場の一つが先述のコーティコン場に該当すると考える。そして、量子場脳理論においては、そのコーティコン場の量子論的な波動現象により、脳の記憶のからくりを説明することになる。
ただし、コーティコン場の量子であるコーティコンだけが脳の中に存在していても、そこに秩序ある量子の運動を見出すことはできない。脳の中に秩序が実現するには、個々のコーティコンを相互に結びつける量子場が存在しなければならないのである。
このことを、電子を例にして説明するなら、電子場に影響を及ぼすことのできる電磁場が個々の電子を結びつけていることに該当するだろう。そこで、電子にとっての電磁場にあたる、コーティコン同士を結びつける量子場が脳の中にも存在していることになる。
そこで第三に、そのような量子場として考えられたのがスチュアートン場である。
さて、これらの概念を前提とした量子場脳理論の仮説では、ニューロンだけでなく、すべての脳細胞の内外に広がった二つの量子場―コーティコン場とスチュアートン場の量子の間に繰り広げられる物理現象によって人間の「こころ」が生み出され、その中には記憶や意識に対応するものもあると考える。
つまり、大宇宙の中を電子(エレクトロン)や光子(フォトン)などが飛び回るように、小宇宙ともいえる脳の中をコーティコンやスチュアートンが飛び交うことによって、記憶や意識のからくりのもとになる物理現象が現れてくるというわけだ。
ここで注目したいのは光子の働きである。
大宇宙の中で電子が引き起こす現象でいえば、オーロラ、超伝導、電子や陽電子の消滅など、どれをとってみても光子が重要な役割を果たしている。それは、電子が電磁場の中に光子を発生させることで、電子場の波動(電子)と電磁場の波動(光子)との間の相互作用を行っているからである。
これと同じことが脳の中のコーティコン場の波動とスチュアートン場の波動との間についてもいえるならば、脳の中においても光子が重要な役割を果たしている可能性が示唆されるといえよう。