出版社:文芸社 著者:大野靖志 定価:1,680円
●プロローグ― 言霊によって現実を変える具体的な方法を初公開 ― どうして日本語は美しいのか? ― 言霊(ことだま)は「単なる迷信」ではない ― 西洋的価値観は私たちを幸せにしたか ― 日本― 新しい文明のパラダイムを提示しうる国 ― いにしえの叡智を今に伝える言霊学と伯家神道 ― 階層性と統合性によって知識を整理する ― 本書の使命とその方法論
伯家神道の秘儀継承者・七沢賢治が明かす神話と最先端科学の世界
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日本に埋蔵された豊穣な知的資源
日本は外国の文化を柔軟に取り入れて、それを磨き上げていくことに長(た)けているといわれる。ここでいう外国の文化とは、中国文化や、ローマ・中東方面からシルクロード・中国・韓国を経由して流入してきた文化、そして、近代以降に入ってきた西洋文化のことであり、その初期のものは奈良の正倉院に名残(なごり)が見られる。
そこには、朝鮮半島や中国はもちろん、遠くインド、ペルシャ、ローマに由来する宝物が収められており、日本がシルクロードの東の終着駅であることを雄弁に物語っているといえよう。
ジャーナリストの高野孟(はじめ)氏は自著において、それらの文化流入経路に東南アジアやロシア経由の経路も加えて図式化したものを紹介しており、さらに、武蔵野美術大学教授の原研哉氏は、その図を90度回転させることで日本が世界からどう影響を受けてきたのかを直感的に理解できると主張されている。
ユーラシア大陸を東進(とうしん)していく文化の流れは、その大陸を右に90度回転させてみると、まるでパチンコ台の中をあちこちぶつかりながら落ちていく玉の流れのようにも見える(前ページ図)。そして、その玉が最終的に飲み込まれていく受け皿が日本である。つまり、ユーラシア大陸の各地で育(はぐく)まれた叡智(えいち)が日本に流入してそこで集積し、洗練が加えられつつ、現代に至るまで大切に保存されてきたということだ。
さらに、日本語が1万年を超えて生き抜いた数少ない言語であることを考えるなら、このような文化流入は四大文明発祥以前―それこそ1万年以上前から起きていたことになるだろう。
七沢賢治氏は日本語の成り立ちと文化の東進についてこう述べる。
「言語は、食べ物などを捕獲し採集するためのコミュニケーションから発達したと考えられます。狩猟(しゅりょう)民は獲物に気付かれないように会話をするために子音が発達する一方で、漁労(ぎょろう)民は海岸や広い海の上で遠くまで聞こえるように母音が発達します。そうした異なった言語文化を持つ民族がユーラシア大陸の東端にある島国にたどり着き、一つの民族として融合する過程で形成されていったのが日本語です。
私たち日本人は、人類が誕生したときからの『種の遺伝子』を持つと同時に、精神や文化の遺伝子をも継承(けいしょう)・蓄積しています。ユーラシア大陸東端の島国というその地理的特性から、大陸からの文明や文化が博物館のように蓄積され、精神や文化の遺伝子として継承されているのです。
このことは、古代レプチャ語や古代ポリネシア語といった言語が、山岳や島々の辺境において1万年を超えて生き抜いてきたことにも似ています」
七沢氏のいう「精神や文化の遺伝子」とは、進化生物学者のリチャード・ドーキンスが提唱する「文化遺伝子(ミーム)」を起源にした概念であり、文化を人から人へと伝達される遺伝子のようなものとして捉えたものだといえる。
その考え方でいえば、日本は世界各地で生まれた太古からの文化遺伝子を現代にまで蓄積・継承・保存していることになるが、現状の日本文化のありようからも分かるように、われわれの目に見えるところに直接それが表れているわけではない。
では、1万年を超えて埋蔵されてきたその豊穣(ほうじょう)な知的資源にアクセスするにはどうすればいいのか?
その入り口となりうるのが1万年以上の歴史を持つ日本語である。もちろん、現代語では不十分であるため、現代語のもとになった古語、さらに古語のもとになった上代(じょうだい)語(上代和語(わご))にまでそのルーツをさかのぼる必要があるだろう。
七沢氏は、上代語とそれに密接に関連する古代の日本文化、精神性、祭祀などを総合して「古層和語圏(こそうわごけん)」と呼んでおり、漢字の導入によっていったんは断絶されたその古層和語圏への再連結こそが、1万年を超えて蓄積・継承・保存され埋蔵されてきた知的資源へのアクセスを可能にすると考えている。
神代より言い伝(つたへ)て来(け)らく
そらみつ大和(やまと)の国は皇(すめ)神(かみ)の厳(いつく)しき国
言霊の幸(さき)はふ国と語り継ぎ言い継がひけり
これは、『万葉集』収載の山上憶良(やまのうえのおくら)の歌であり、日本は遠い過去からずっと言霊の国であるという意味になる。
日本語を古層和語圏へアクセスするツールと考えてみると、この歌の意味するところを別の角度から理解することができるだろう。